欲望という名のゲーム?95

矢口 沙緒  2010-08-08投稿
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「よし、決まった。
じゃ、さっそく持ち駒の交換だ」
「待って!
まだメンバー不足よ」
深雪が言った。
「孝子がどうしても必要よ」
「でも、孝子さんは全然やる気ないわよ」
「そうだよ。
こいつの言う通りだ。
孝子はこの宝探しに全く関心を示さない。
協力させるのは難しいぞ」
「でも、あの子が一番賢いのも事実よ。
絶対にあの子の協力が必要よ」
深雪は言い張った。
「よし、分かった。
深雪がそこまで言うならそうしよう。
だが、うまく孝子を誘えるか?」
「あたしが言い出したんだから、あたしがやってみるわ」

深雪は孝子の部屋をノックした。
「どうぞ」
孝子の返事がある。
深雪が部屋に入ると、孝子はソファーに腰掛け、何か分厚い本を読んでいた。
「ねぇ、あたし達に協力してくれないかな」
深雪が遠慮がちな猫なで声を出した。
「なにを?
私、忙しいんだけどな」
その言い方に、深雪は少し不愉快なものを感じた。
ソファーにくつろぎ、本を読んでいるというのに、いったい何が忙しいのか。
しかし、ここは下手に出るしかない。
「ほら、例の宝探しの期限が今日一日だけでしょ。
それでね、あたし達は協力する事にしたのよ、四人とも。
あとは孝子だけなんだけど、あんたも協力してくれないかな、あたし達に」
「私はやめておくわ。
興味ないもん」
孝子は本から目を離さずに答えた。
それも深雪は気に入らなかった。
「兄弟がみんな協力するのよ。
ねぇ、お願いよ。
協力してよ、孝子」
「しないって言ったでしょ」
ここまでが深雪の限界だった。
彼女は完全にキレて、大声を上げた。
「なによ、その口のききかた!
あんた、姉さんの言う事がきけないの!」
思わず声を荒立ててから、深雪はしまったと気付いた。
だが、もう遅い。
孝子がパタリと本を閉じ、深雪を見た。
しかし意外にもその顔は、何か嬉しそうだった。
「そういう言われ方って、いいわよね。
私、ずっと憧れてた。
最初から遠慮なんてしないで欲しかったの。
はっきり
『協力しなさい』
って言って欲しかった。
だって、姉さんじゃない。
妹に遠慮なんかしないでよ。
私、いつでも協力するから」
そう言って、孝子は立ち上がった。





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