17.
真理は役所に離婚届けを提出し、それが受理されたので徹に電話を掛けた。
真理「もしもし?私。今、役所にいってきたの。」
徹「役所?」
真理「そう。離婚届けを出して来たの。これで今日から私は独身よ。」
徹「そうか!じゃー今夜は御祝いするか?」
真理「本当?嬉しい!」
徹「夜、マンションに迎えに行くよ。」
真理「うん、分かった。」
−その頃−
望代「もしもし、大賀根だけど。」
郁江「えっ?はっ、はい!大賀根さん!?お、お久しぶりです。」
望代「今から会いたいんだけど、会えるかしら?」
郁江「は、はい。大丈夫です。」
望代「良かった。じゃあ今から向かうから30分で外に出れる支度をしてちょうだい。」
郁江「30分ですね。わ、分かりました。」
徹の妻、浦道郁江は慌てて出掛ける準備を始めた。
郁江の方が望代より歳は、かなり上だが会社が望代の会社の下請けの下請けなのだ。
下請けの下請けと言っても社員は何千人といる。
他にも会社を持っているのだが、その幾つかを徹が社長をしているのだ。
徹は婿養子なので会社の全てが郁江の親の会社だ。
親が全ての会社を見切れないので郁江と徹とで会社を分担して社長をしているのだ。
しかし、それでも望代の会社より、はるかに小さい。
小さいと言っても大手なのだが、とにかく望代の会社が大きすぎるのだ。
望代は大賀根財閥のトップ。
そのトップの望代が「会いたい」と言うのだから郁江は、それに従うしかなかった。
−30分後−
黒塗りのボディが長い高級車が郁江の横に静かに停まり窓が開いた。
望代「お待たせしたかしら。」
郁江「い、いえ。とんでもございません。」
望代「どうぞ、乗ってちょうだい。」
郁江「あっ、はい。」
郁江は運転手が開けてくれた後部座席に乗り込んだ。