望代は運転手に行き先を告げると運転手は短くキレイな返事をして車は走り出した。
車は10分ぐらい走ると隠れ家的な高級店で、とまった。
運転手が再び降りて後部座席のドアを開けると望代に続いて郁江も店の中へと入って行った。
店はオシャレで落ち着きのある雰囲気だ。
しかし、お客が誰も居ない。
お昼の忙しい時間帯は過ぎているものの誰も居ないなんて…郁江は「もしかして望代が貸し切りにしたのかも。望代なら、やりかねない」と思っていた。
店員が席に案内すると、すぐに違う店員が飲み物とケーキを運んで来た。
望代「紅茶だけど、よろしかったかしら?」
郁江「はい、紅茶は大好きです。有り難うございます。」
望代「ケーキで、よろしかったかしら?お腹は、すいていらっしゃる?」
郁江「いえ。お昼は先程、頂きましたから大丈夫です。」
望代の丁寧口調に郁江は緊張していた。
少し紅茶とケーキを口にしてから望代は話し始めた。
望代「ご主人はお元気?」
郁江「は、はい。元気です。最近は忙しいみたいで、あまり会ってはいませんが…あの、主人が何か?」
望代「実はね、ご主人を調べさせて頂いたの。」
郁江「主人を?どう言う事ですか?」
望代「私ね、大切な友達がいるのよ。その友達は結婚しているんだけど奥さんが浮気をして友達は凄く悩んでいたの。そんな時、奥さんから離婚届けをつきつけられて離婚をしてしまったわ。」
郁江「まさか、その浮気相手が、うちの主人だと?」
望代は頷いてA4サイズの封筒から写真を取り出した。
望代「これを見て」
郁江「これは?ま、間違いなく、うちの主人です」
望代「これは私のグループ会社が経営する旅館とホテルよ。」
その写真には仲良く写っている徹と真理の姿があった。
愕然とする郁江に望代は坦々と話した。
望代「大切な友達が離婚をしてしまった事は仕方がない事よ…でもね、私は許せないのよ。」
郁江「うちの主人が本当に申し訳ない事を…」
望代「ねぇ、私に協力してくれないかしら?アナタだって、ご主人がこのままでは嫌でしょ?」
郁江「もちろんです。協力させてください。」
つづく