05.言いつけ
土曜に結城君とデート!
いや、違う。付き合ってないし。
でも嬉しいなあ。早く来ないかな、土曜日。
今日は金曜日。明日じゃん!
どうしよう、着ていく服とか。
でもその前に風邪が……。
「角田さん、まだ熱あるのかしら……。顔赤いわよ?」
「体温計はさんでて」
「はい」
渡された体温計をはさんで、結城君からもらった缶ジュースを眺める。
何かもったいなくて飲めないなあ。なんて考えながらニヤケる。
しばらくすると体温計が鳴った。
見てみると37℃5ぶだった。
大丈夫かな、明日。
「鳴った?」
「あ、はい」
「37℃5ぶかあ……。角田さんって1人暮らし?」
「はい」
「うーん。じゃ、今日早退しようか。私送っていくから」
「いいんですか?」
「いーのいーの。さっ、準備して」
何か申し訳ないなあ。
そう思いながら、私は帰りの準備をするため教室に向かった。
*
「送ってもらうなんて、すいません」
「いいのいいの。また倒れられたら嫌だし。さ、乗って乗って!」
「はい。……お願いします」
私が車に乗り込むと、先生は戸を閉めてくれた。
そして先生も運転席に乗って、エンジンをかけて出発した。
「ねえ、角田さん。結城くんとはどういう関係なの?」
先生は楽しそうな口調で聞いてきた。
私はその質問にブッと吹き出してしまった。
「ど、どーゆーって……。別に何でもないですよ!」
「本当?」
「ほんとです!」
「ふーん……」
何だろう。この先生の反応。
何でもないことは事実。
友だちって言えるような関係じゃない。
ただ委員会が一緒なだけ。
何でもない、何でもない。
それなのに、何で私を誘ったんだろう。
これってまさかのまさか……なんてね。
車はあの土手に入った。
そしてしばらく行くと、少し先の土手を降りたところに誰か座っている姿が見えた。