日頃の行いの悪さでこんなことになったのだとしたら誰かの一抹の善行で光が射したに違いない。
平たく言うと晴れたのだ。
ようやく雨が完全に上がって望んでいたもの…これ以上なく白く輝く月が頭上に現れたのだ。
ああ、神様。
いろいろもろもろの神様…ありがとうございます!
僕らは立ち上がり、見えるようになった互いの顔とそこに浮かぶ希望と不安を読み取った。
拓斗があからさまな空元気を振り絞り笑った。
「行こうぜ」
圭司は黙って頷き僕は微笑みで答えた。
月光とは、なんて明るいのだろう?
太陽から借りている光だというのに、こんなにも辺りを照らし出すとは。
都会では感じたことのない有り難さ。
べちゃっとした靴の不快な感覚を無視してとにかく一定の方向に向かって歩く。それほど大きな山じゃない…が、僕らよりは遥かに複雑で威圧的だ。
どれくらい歩いただろう。
正直両足とも、休ませろ!と抵抗していたが従うわけにはいかない。
また雨が降ってきたら…それは三人を突き動かし続ける恐怖だ。
「オイ!」
それまで一言も口を開かなかった圭司が、後ろから呼び止めた。
「あれ、なんだ?」