灰色の公道。
赤いライトを点滅させている車。
よろめきつつ近づいて、ふと僕の脳裏に疑問がよぎる
こんな真夜中、こんな場所で端にも寄せず…何をしているんだ?
拓斗がいち早く近づいて、車の窓を叩いている。
月明かりより確かなはずの街灯が明滅し、僕の漠然とした不安を煽る。
圭司は僕と目線を合わせ、また拓斗に戻した。
苛立つ思いをぶつけるように窓を叩く音に力がこもる…風がざわめき、生者が立てる音に怒りを覚えたかのような唸りが巻き起こる。
おかしい。
拓斗もようやく気づいたのか僕らを振り返った。
圭司はゆっくりと向かい、僕もそれに続く。
「おっさん、酔ってんじゃねえのかな…全然起きないんだよ」
運転席に座る男…でっぷりしたオジサンらしき人は、確かにうつぶせたまま動かない。
闇にとけこむような黒いセダンのハンドルにつっぷしたままだ。
「…おい」
まさか死んでるのか、と思った刹那、男はぐらぐらと揺れた。
良かった、生きている。 拓斗の言う通り泥酔しているんだろう。
圭司が、車のドアに触れ、「なんだ、空いてるぞ」
と呟いた。