欲望という名のゲーム?100

矢口 沙緒  2010-08-12投稿
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パスタを口に運びながら、喜久雄は考えていた。
さっき友子が、『黒猫と三毛猫の関係』と言った時、何か答がすぐそこにあるような気がした。
だが、それが形にならないのだ。
とても簡単な事のように思える。
すぐ目の前でヒラヒラしているみたいだ。
でも、うまくつかむ事が出来ない。
最初から順序立てて考えなくてはいけないらしい。
彼はフォークを置き、腕組みをした。
まず『三毛猫』だ。
友子は三色の毛の猫だと言った。
確か、黒と茶と白だ。
それに引き換え『黒猫』は黒一色だ。
一方は三色、そしてもう一方は一色。
もしかしたらこの『黒猫』の意味は、三色の内の一色だけを強調しているのではないのか。
『三毛猫』の中の『黒猫』の部分だ。
どこかに三色の物があって、その内の『黒』だけを強調しているのではないだろうか。
それが『三毛猫』と『黒猫』の関係だろうか?
…そうだ。
この考え方は、なかなかいい線をいっているような気がする。
これなら孝子が言っていた道しるべという感じがする。
つまり、黒と茶と白の道があり、その内の黒の道を示す道しるべだ。
ここまでが正しいとすると、残る問題はただひとつ。
その三色の物は何か?
もちろん三色スミレなどではない。
麻雀の三色という役も関係がなさそうだ。
それは、もっと明確な形で三色のはずだ…
「分かったー!」
突然、喜久雄が立ち上がり、大声を上げた。
そしてすぐ、げらげらと笑い出した。
「ちょっと、気味悪いわね。
いったいどうしたの?」
「ねぇ、あなた。
何が分かったの?」
友子は興奮した喜久雄の様子に、ただならぬ物を感じていた。
「分かった!
間違いない。
なんで誰も気が付かなかったんだろう。
簡単な事なのに。
あの『黒猫』は三毛猫の三色の内の一色、つまり『黒』を強調しているんだ。
黒と茶と白の内の黒だ。
孝子の言った事は正しかった。
あれは確かに道しるべだ。
僕達は三色の内の黒を探せばいいんだ」
「おい、喜久雄。
三色って言うが、その三色の物とは何だ?」
「兄さん、まだ分かりませんか?
黒猫のワインは、どこにありました?」
「地下のワイン貯蔵庫だ」
ガタン!
深雪が立ち上がりかけて、椅子が鳴った。
彼女も分かったのだ。



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