「ん?言っていなかった?TVを使って渡沼をTV局に呼び出そうって作戦だよ」
京都が満面の笑顔で雪野に親指を立てて説明をすると、雪野は怒る気力も失せたのかその場にへたり込んでしまった。
京都が「大丈夫?佐藤さん?」と、心配そうな声で雪野に手を差し伸べると雪野は煮るなり焼くなり好きにしなさいと、言わんばかりにゆっくりと京都の手を使って立ち上がったが一応
「なんでTV局に行くって聞いてもいいですか?宇川君?」
雪野がため息をつきながら京都に聞いた。
この二日間でよ〜く分かった事が一つだけある。否、改めて理解した。雪野が学校では猫を被っていた事など比にならない事だ。それは【鏡京都は人知を超えた馬鹿である。頭のネジが一本どころか全て外れている】事だ。
思えば、犯人の身でありながら事件現場に行くといったことから始まって遺体安置所・虎鬼門、続いてはTV局ときたもんだ。もう抵抗する気力よりもその時その時に使う体力を残した方が身のためなのだが、いくらなんでもTV局に行く理由を聞かなければアドリブも効かないのだろう。
「ん〜と、はしょって言うとね。TV局を乗っ取っちゃおうってこと」
京都が笑顔でとんでもないことを言うと流石に諦めていた雪野でも
「んなに馬鹿な事を言ってるん…!?」
余りのおバカ発言に思わず大声を出そうとした雪野に思わず京都は雪野の口を塞いだ。いくら路地裏といえ、大声を出せば人目に付く。
「(んなんで、そんな事をするの?)」
状況を理解した雪野は冷静になって小さな声で京都に聞いた
「だから、言っているじゃん。TV局を乗っ取って事(事件)を大きくして渡沼をおびき寄せるんだよ」
「ん〜だ〜か〜ら〜どうやってあんな大きなビルを乗っ取るってゆうの?私たちは丸腰なのよ?」
雪野はビシッと目の前にある大きなビルを指さした。高さ何mあるのか分からない巨大なビルを指さした。
確かに、こんな大きなビルを高校生二人で占拠するのは無理があるだろう
「とにかく私はこれ以上罪を重ねることは一切しないから!!」
雪野ははっきりと宣言してビルの壁にバンと手を叩きつけた。
これ以上罪を重ねればいくら無実を証明できたとしても余罪で捕まる可能性が出てくる。公務執行妨害はもみ消せそうだが、TV局占拠はもみ消せないだろう。