「保養所はいつ完成する?」
「来月には…」
アギールはエリックの前に畏まって答えた。
「そうか…」
エリックは玉座から静かに立ち上がると、邪悪な笑みを浮かべた。
「奴らの修練はどこまでいっている?」
「は…?」
アギールは怪訝そうな顔で、エリックを見た。
「秘密精鋭部隊の事だ」
「…ほぼ修練は終わっております。後は実戦のみですが…」
「よし。ならば保養所にあれを運び込む時に奴らの内三名を護衛につけろ」
エリックは小さく頷いて、アギールに指示を出した。
アギールはゴクリと唾を飲み込んで、
「いよいよ実戦投入ですか…」
と、震える声で言った。
「そうだ。何も無いに越した事は無いが、二度もあれを奪われている。慎重に事を運ぶ必要があるだろう」
「なるほど」
「それに、その不届きな奴らに我々の力を見せつけてやる事も必要だからな」
エリックは忌々しげな表情を浮かべながら、軽く腰掛けを叩いた。
「速やかに手配せよ」
「ははあっ!」
アギールの声が謁見の間に響いて、左右に飾られたガラス窓が微かに揺れ動いた。
―父上には、負けぬ。