「うそ…。」
『ウソじゃないの。また、柴山先生に、ここはろうの人が通う学校じゃないって…。』
「そんな…許せない。」
サユは席を立って、学校へ向かおうとした。
『ちょっと待ってよ。ちゃんと聞いて。』
「…ごめん、つい。」
サユは再び席に戻った。
『私、死のうと思ったの。歩道橋から飛び降りてね。でも、それを助けてくれた…。』
「その人は…カズヒロくん?」
アキは意味ありそうに頷いた。
『全部話したの。カズヒロに。いじめられたことも、先生から言われたことも。』
「そう…。」
『私、やっと言えたの。カズヒロに好きって。』
サユは喜んでいた。
「良かったね。これでカップル誕生か…。」
『やだなあ。せかさないでよ。くれぐれも結婚しろとか。』
サユは飲んでいたジュースを吹き出した。
「ちょっとアキ、笑わせないでよ。結婚は早すぎでしょう。」
サユはテーブルを必死に拭いていた。
そのとき、サユは手話を使わず、
「私もいい人見つけたい…。」
『何?』
「ううん。何でもない。」サユの恋は、いつ芽生えるのだろう。