五人はワイン貯蔵庫の中を歩き回った。
こうして特定の一本を探すのは、それほど手間のかかる作業ではなかった。
ワインはその産地別に、見事に分類されていたからだ。
そして、ついに問題のワインを見つけた。
シャトー・ムートン1982年。
ラベルには得体の知れない絵が書いてある。
「ねぇ、これ封を切ったあとがあるわよ。
ほら、ここのところがこんなになってる」
孝子がボトルの首の周りについている封を示す。
「このままじゃ中がわからん。
コルクを抜くぞ」
明彦は持参したコルク抜きで、慣れない手付きでコルクを抜いた。
「よし、開いた。
この中に、白のクイーンがあるかどうかだ。
深雪、牧野から借りてきた料理用のボールをこっちにくれ。
これに中身を移してみる」
トクトクと小さな音を立てて、深紅色のワインがボールに移される。
四人はそれを、息を殺して見守った。
ほとんどのワインがボールに移されても、ほかには何も出てこない。
ダメか!
そう思い始めた時、最後に何か小さい物が、ワインボトルの口から飛び出した。
それがポチャリと音を立てて、ボール一杯のワインの中に沈んでいった。
それを慌てて喜久雄が取り上げた。
紛れもなく、小さな白の水晶のクイーンだった。
「ついに来たぞ!
俺達はここまで、ついに来た。
もう少しだ。
ニ百八十億は、もうすぐだ」
明彦は自分が正しかったと確信した。
一人ではダメだが、五人なら必ず解ける。
雅則の罠をかいくぐり、きっと最終目的地に到達できるはずだ。