間違いない。あれはアオトだ。
顔を見なくてもわかる。
するとアオトは、私の声が聞こえたかのようなタイミングでこっちを見た。
その瞬間、私とアオトの目が合う。
アオトは悲しげに微笑んだ。
車はアオトとすれ違い遠さがる。
私は急いで体を後ろによじった。
でもアオトの姿はどこにも見当たらなかった。
風邪で幻覚でも見たのかな。
「どうしたの?」
「あ、いや……。別に」
そう言うと、私はもとの体制に戻った。
うん、そーだよ。幻覚幻覚。
そう言い聞かせる。
そして明日のことを頭の中で巡らせた。
*
「今日はちゃんと食べて早く寝ること! いい?」
先生は運転席の窓を開けて言った。
私はその言葉に頷いて返す。
「あ。明日、楽しんできてね」
「え、話聞いてたんですか?!」
「ええ。私、耳いいのよ? じゃ、月曜はちゃんと学校きなさいね」
先生は笑いながら窓を閉める。
そして手を振ってゆっくり車を発進させた。
私は先生の車が見えなくなるまでその場に立っていた。
ああ。話聞いてたんだ、先生。
だからあんなこと聞いてきたのかな。
まあいいや。明日の準備しなきゃ!
私はアパートの階段を駆け上がった。
途中、よろめいたけどすぐに持ち直してまた駆け上がる。
明日どこに行くんだろう。何来て行こうかな。
そんなことを考えながら階段を上る。
明日が楽しみで楽しみでしょうがなかった。
先生の言いつけは守れなかった。