喘ぎながら、もうこれ以上進めない、と悟って僕らは辺りを見回した。
煌々と照らされたアスファルト…。
あれほど焦がれた光景にも関わらず今や心は麻痺している。
「修也、あれ、来るかな」
「…わかんない…けど、僕はここに突っ立っていたくない」
アイツは躊躇なく圭司に噛みついていた。
もしかしたら車から逃げ出したことで満足し、別の方角へ行ったかもしれない。
だが、違うかもしれない。
道に佇む僕らは無防備で、何回も後ろを振り返っては確認する。
「じゃあお前、また森に戻るのか?正気かよ…どっちにしても遭難して死ぬぞ」
答えなんか出るわけない。
とにかく、進むしかない。
「途中車が来たら死ぬ気で止めようぜ」
拓斗の声に、今まで聞いたことのない響きが滲む。
僕は頷いて、足を引きずるように前へと突き動かす。
「とにかく…」
「シッ…待て」
うなじが逆立つ。
気のせいか?
小さな、ほんの小さな、カツッという音。
拓斗は恐怖から息をとめ、僕は振り返り耳をすませた
カッ…カッ…カッ…カッ…
間違いない。
アイツだ。