音無  2010-08-15投稿
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君と初めて会ったのは、小三の時だっただろうか。
時期は曖昧なのに、あの瞬間だけは鮮烈に思い出せる。
転んだ君を、たまたま通りすがった僕は、自分の家に連れてきたね。泣き出した君を僕は必死に慰めた。すると――笑ってくれたんだよね。そして、友達になった。
次の日。僕は驚いた。おそらく君も、同じくらい驚いてたと思う。君が、転校生として僕のクラスにやってくるなんて……。

偶然なんかじゃない。

これを運命って言うんだ。

第一話 二人の時間

初めての出会いから七年。
隣にはいつも、天音(あまね)がいる。
七年も経つのか……秋人(あきと)はここに至るまでを思い返した。
長く思えるが、やはり短かった。特に大きなケンカはしたことない。お互いの家が近いから登下校はいつも一緒。時の成り行きで、同じ高校にも受かることができた……
「……ぇ、秋人?ねぇってば!」
突然天音が大声を出したので、秋人はビクッとした。
「秋人、あたしの話聞いてなかった?」
「い、いや、聞いてたよ……」
思わず嘘をついた。全て聞き流してしまっていた。天音は訝しげに秋人を見る。
「……聞いてないでしょ?」
ギクリ。弁解しようと言葉を模索していると、天音がいきなりクククッと笑い出した。ギョッとして隣を見ると、天音は腹を抱えて大笑いし出した。
「ちょ、あ、天音?」
天音は笑いを堪えながら、
「アハッ、ご、ごめん。だって、秋人、すっごーく分かりやすいんだもん!」
と言うと、また笑い出した。
ポカンとしてた秋人だったが、それはやがて、笑いに変わった。二人で絡まるようにして笑い合う。通行人から変な視線を投げかけられるが、そんなのお構いなし。
こうして二人で笑っている時が、一番の幸せだった。
天音の笑顔は、いつも眩しかった。

ずっと、続くと思っていた。楽しくて、温かい日が。
しかし、現実は、そんな僕らを引きはがそうとした。



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