エリックはかつて父親から自分と母親に浴びせた冷たい眼差しを思い出しながら、小さく唸った。
「彼は約束してくれたぞ」
とある町の路地裏。
リカルドはフードを目深に被って腕組みをしながら、言った。
その隣には同じようにフードを目深に被ったエナンが、小さく頷いていた。
「だが…危険だぞ」
「…それでもやるしかない」
短いやり取りの後、彼らは一斉に息を吐いた。
「あの方はどうなっている?」
「大丈夫だ」
「そうか…良かった」
エナンは安堵したような表情で、
「あの方が生きているのであれば、まだ希望は持てる」
と、呟いた。
「希望?」
「奴が心を入れ替える事だ」
「どうだかな…」
リカルドは目を固く閉じて、首を横に振った。
「ありゃ筋金入りの親嫌いだ。ちょっとやそっとじゃ変わらんぞ」
「だが、幼少期は立派になれると持て囃されていたんだろう?」
「確かに。頭も良いし武器の扱いにも長けていた。だが、父親が妻と仲が悪くなってからその息子に対する扱いが冷ややかなものになったらしい。それが原因でああなった」
「…」
エナンは唇を噛んで、頭を掻いた。