06.カラオケ
───『明日10時に駅前だって』
───『頑張りなよ!』
昨日、ユウカからメールがあった。
時間を伝え忘れた結城くんから伝言を受け取ったみたい。
ちょっと早めに着いちゃったなあ。
結城くんはまだ来てないみたいだし。
私は公園のベンチに座って結城くんを待った。
結局風邪は治った。
先生の言いつけを守らないで、夜遅くまで今日着ていく服選びをしてたのに不思議。
「早く来ないかなあ……」
辺りをキョロキョロしていると、正面の道路に1台の車が止まった。
私がその車を見ると、車から誰かがおりてきてこっちに走ってくる。
「待たせてごめんね」
結城くんだった。
私は慌てて首を横に振る。
「じゃ、行こーか」
すると結城くんは私の手を取って車の方へ向かった。
ゆ、結城くんが私の手を! やばい、心臓が!
車には4人乗っていた。
運転手の男の人と助手席に乗っている女の人。
2人とも年上そう。
そして後部座席に座っている女の子と、その隣に座っている男の子。
この2人は、どちらも同い年くらいに見える。
てっきり、私と結城くん2人きりかと思ってたのに。
何か残念。
でも、誘ってくれたのは凄い嬉しいからいいか。
「さ。乗って乗って!」
助手席の男の子が私を促すと、結城くんは後部座席の戸を開けてくれた。
私が乗り込むと、結城くんが隣に乗って戸を閉める。
そして車は出発した。
*
車は駅から少し離れたカラオケ店に止まった。
私たちは車からおりてカラオケ店の中に入っていく。
「リクちゃんってさ、彼氏いるの?」
個室に入るなり後部座席の女の子、リエちゃんに言われた。
「いないですよ!」
「えー。嘘でしょ? 可愛いのに」
年上そうな女の人、ミキさんも交じってくる。
「いないです、本当に」
しばらくそんなやり取りが続いたとき、結城くんが部屋に入ってきた。
「何で飲み物選ばないんだよ。ドリンクバーだってさ。飲み物、何飲む?」
皆の注文を聞き終えた結城くんが部屋を出て行こうとした。