Ganis Falsian 神の使い手〈1〉〜始まりの緑月〜

Eight Two Seven  2010-08-18投稿
閲覧数[467] 良い投票[0] 悪い投票[0]

序章 【暗闇の中の女王】

「此処は、何処だ?」
辺りは一面、墨をこぼした様な闇に包まれて、目に見えるものは何もない。
しかし、何故か辺りを見回すうちに暗闇の中の遠方から、何か灰色の人影がこちらに向かって飛んできたのがはっきりと見えた。
また、彼奴が来る!
長い白髪を靡かせて、黒い悪魔の翼を持ち、人の首筋に噛み付いては、忽ちにして全身の血液を吸い尽くす、暗黒の世界を統べる女王…。
エルファは必死で逃げ出した。その恐ろしい白く光る牙が、自分の柔らかい首の皮膚を突き破いてしまうその前に。しかし、どれだけ速く走っても、怪物との距離は離れるどころか、みるみるうちに縮まるばかりだ。
「キル、キルキルキルッ!」
突然、かなり遠くの方で金属を擦り合わせた様な甲高い音が、バサバサという翼が羽ばたく音と共に聞こえた。
エルファは後ろから女王に追われていることも忘れ、その場に立ち止まった。
音が何処から聞こえるのか、辺りをひたすら見回し続けるが、やはり何も見えない。
その時、前方に無数の黒い何かが飛んで来るのが見えた。それも、金属を擦り合わせた様な、キルキルという甲高い音と共に。
あの音の正体は、その黒い物体の鳴き声だったのだ。
それは人の頭程の大きさで、球体だった。左右には蝙蝠の様な真っ黒な翼が生えており、自由に宙を飛び回ることが出来た。その姿は異様なまでに奇妙で、恐ろしい物だったが、その生物の奇妙さといったら、それだけではなかった。
頭と思われる球体には、翼まで届きそうに大きく裂けた口が開いたり閉じたりの動作を何度も繰り返し、その巨大な口の中では、尖った無数の牙が銀色に鋭く煌めいている。
足だと思われる部分には、鷲の様な大きな鈎爪があり、頭の頂点には、ツノの様に尖った小さな耳がついている。
これだけでも充分に気分が悪くなりそうな姿であるが、更にその気味悪さを増幅させる、生気の無い一つの大きな真紅の瞳が鈍く光っている。
そんな不気味な物が群れを成して、今にも自分に襲い掛かろうとしているのだ。
その黒い生物から逃げようと、とっさに後ろを振り向いたその時、エルファはまるで凍りついたかの様に、体が止まった。自分の真後ろにはつい先程まで自分が逃げ続けていた女王が立っていたのだ。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 Eight Two Seven 」さんの小説

もっと見る

ファンタジーの新着小説

もっと見る

[PR]
人気雑誌多数掲載
脂肪溶解クリーム


▲ページトップ