子供のセカイ。196

アンヌ  2010-08-19投稿
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しかし、それを言うハントでさえも影なのだから、この言い方は好んで用いられることはないが、あえてハントはこのように言った。
案の定舞子は、訝しそうな表情でハントを振り返った。
「二人の影って……お姉ちゃんの二人の仲間のこと?」
「舞子!」
覇王のいさめるような声が飛んだが、すでに遅かった。ハントは思わず息を呑み、礼儀も忘れて舞子を真っ向から凝視した。
「お姉ちゃん…!?」
じわ、と掌に汗がにじむ。ハントは心底驚いていた。ということは、昨日姿を消して潜んでいた二人の光の子供の内、片方が舞子の姉だったということになる。
(覇王様が光の子供にこだわっていた理由が、ようやくわかったな。しかし、まさか姉とは……。)
予想外だ。舞子に関係あるにせよ、せいぜい舞子の知り合いか友達程度の存在だと思っていたのだ。しかし姉ならば話は別。肉親が与える影響はとにかく大きい。特に舞子はまだ精神が幼いのだから、その姉ともなれば、相当大きな影響を与える存在だろう。
(こりゃ、ますます肩入れのしがいがあるぜ。)
ハントは徐々に体中に広がっていく興奮を気取られないようにしながら、これは困った、という顔を装って舞子を見た。
「お姉さんのお仲間ですか!ならば、消すのは少々、躊躇われるでしょうねえ。」
舞子はますます顔をしかめ、覇王とハントとを見比べる。
「消すって、どういうこと?私、そんな命令出してないわよ。」
「ですが先程、覇王様が……。」
ハントがちらりと覇王を見遣るのにつられて、舞子は覇王に目線を向ける。凄みのある目つきでハントを凝視していた覇王は、舞子に見られることで慌てて固い表情を崩した。
しかし、すでに舞子は不機嫌になっていた
「また勝手に話を進めようとしたのね、覇王。」
眉をつりあげて覇王を睨む。舞子が怒るのも、当然といえば当然である。つい今朝方、舞子は目標を達成するため、姉を捕まえるのに全力を尽くす覚悟を固めた。それに伴い、今まで舞子そっちのけで話を進めていた覇王に対して、知っている事を全て報告するように指示したばかりである。
それを昼になる前に裏切られたとあっては、腹を立てないわけがなかった。
覇王は信頼を取り戻そうと、必死に言い淀んだ。
「違うんだ、舞子。君なら当然そうするだろうと思ったからそのように指示したまでで……。」

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