『私、普通に学校に行って、友達と笑って過ごして、放課後は遊んだりして…平凡な毎日を過ごしたい…。失礼ではありますが、私は病院など行きたくないです。病院に行く、それだけで私は耳が聞こえないんだって、自覚してしまうんです。だから…私の耳が聞こえないことを富田先生に言った人に、この思いを伝えたいんです。』
富田先生は笑って言い返した。
「もしかしてその人に対して、怒りたいんですか?」アキは、
『…。』
うまく言葉にならなかった。
「カズヒロくんですよ。」そう伝えられた途端、アキは、
『検査入院はします。けど今その人に会いたいんです。少し時間いいですか?』答えも聞かず、病院を出たアキ。
真っ暗の町並み。耳が聞こえないと、その恐怖は凄まじいだろう。
アキは、カズヒロにメールした。
『会いたい』
走って、走って、カズヒロを探した。
信号の付いていない交差点。
高ぶる気持ちが上回ってしまい、急いで渡ろうとした時腕を誰かに掴まれた。
その直後、車が猛スピードで車が通り過ぎていった。後ろを振り返ると、カズヒロがいた。
『ごめん…。』
カズヒロも、走ってアキを探していたのか、呼吸が荒い。
「信号がない交差点は、しっかり確認しないと。」
『そうだね…。』
「あ、そうだアキ、検査入院するんだろ?」
アキの顔が曇った。