「保養所が来週いよいよ完成するようです」
エナンは小屋の中でザック、ミーナ、ダリル、リリア、メディナに向かって報告した。
「いよいよか!待ちくたびれたぜ!」
ダリルはニヤリと笑って、指を鳴らした。
「それで、あれが運び込まれるのはいつなの?」
「情報によれば保養所完成と同時のようです。ですから来週には行動を起こさなければなりません」
「来週…!」
ザックはゴクリと唾を飲み込んだ。
「で、私たちはどのように行動すればいいのかしら?」
メディナは鋭い目でエナンを見ながら尋ねた。
「山の上にある保養所ですから各所に隠れる場所があります。そこで待ち伏せるのです」
「なるほど。ただ、彼らも馬鹿では無いわよ。運ぶ途中の道は徹底的に調べながら進んでいくはず」
「確かに」
エナンは小さく頷いて、
「その可能性は極めて高いです。そこで今回は三手に分けます」
と、言った。
「三手?」
「はい。変装組と襲撃組、そして囮組です」
「囮組?」
ダリルは怪訝そうな表情で、エナンを見た。
「名前の通り、囮になる人の事です。危険度は高いですが、これであれを奪える可能性は極めて高くなります」