「開くわよ!」
深雪が叫んだ。
「ニ百八十億円への扉だ」
喜久雄が言った。
「捕らわれのクイーンを救い出し、正しき位置に導け…」
友子がつぶやいた。
「…されば、扉は開かれん。
やったぞ!
俺達は雅則に勝ったんだ!」
明彦が勝利の雄叫びを上げた。
五人はいっせいに、その中を覗き込んだ。
そして、その中にある物を見た途端、全員の表情が変わった。
「そ、そんな馬鹿な!」
「…ここまで来たというのに…」
明彦と喜久雄が同時に言った。
深雪は声も出ず、その場に座り込んだ。
友子と孝子は驚きのあまり、目を大きく見開き、それを見詰めていた。
その中には一枚の紙と、そして黒い金属製の雅則の笑い顔が入っていた。
紙にはワープロで、次のように書かれていた。
『クイーンまでは
よかったが
そのあと道を
間違えた
あしからず 』
ホールの時計が、無情にも十ニ時を告げた。
「時間です。
残念ながら、ゲームセットです」
鹿島がそう言うのを、五人は茫然自失で聞いていた。