欲望という名のゲーム?114

矢口 沙緒  2010-08-22投稿
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五人はマイクロバスに乗り込んだ。
鹿島の車には、鹿島とそれに牧野夫妻、そしてその腕に抱かれた三毛猫のパブロが乗った。
車に乗り込む前に、屋敷を見上げたパブロが、一声だけ鳴いた。
長く余韻を残す、悲しい鳴き声だった。

木々に挟まれた山道を、マイクロバスは走って行った。
五人は無言のまま、バスに揺られていた。
すでに別れは済ませたからだ。

明彦は窓の外を見ながら、仕事の事を考えていた。
七日間の遅れを取り返すには、しばらくは休みも返上しなくてはならないだろう。
同僚にこの七日間の事を聞かれたら、どう答えよう。
スペインに行ってきたとでも言おうか。
どうせまともに話したって、こんなこと信じてくれるとは思えない。
ニ百八十億円は惜しかったが…
だがいいさ、どうせ最初から夢みたいな話だったんだ。
面白い夢を見たと思えば、それでいいさ。
この切り替えの早さが、明彦のいい所であった。

喜久雄はそれなりに満足していた。
ニ百八十億など、しょせんは夢だ。
五千万で家のローンが払えれば、それでいい。
あとは自分で何とかするさ。
たとえニ百八十億円はなくとも、僕には友子がいてくれる。
彼の中に、何かが芽生え始めていた。
あえて言葉にするなら、生きて行く自信かもしれない。
さらば、奇想天外な謎々屋敷よ。
さらばそこに眠る、何の価値もなくなった四枚の紙切れよ。

友子にとってのこの七日間は、奇妙でそして貴重な七日間だった。
自分にとって一番大切なものをはっきりと認識し、そしてそれを失わずに済んだ。
もう、ほかに望むものはない。
ある意味で、彼女は宝探しに成功したのかもしれない。
幸せという、つかみどころのない幻を、彼女はその手にしっかりとつかんだような気がした。


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