七色の金魚?

MINK  2006-08-31投稿
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それから私は毎日彼との思い出を思い出した。
一個一個丁寧に。忘れてしまっていたことまで鮮明に思い出せた。
日に日に心が軽くなるのを感じた。
明日で丁度金魚を飼って一週間が経つころ、ヤエから「ご飯に行こう」と言うお誘いがきた。
私は断る理由もなく、その誘いを受けた。
「最近、顔色良くなった?」
やえは優しく尋ねた。私も穏やかに答えた。
「そうだね。気分はいいよ」
そう言って、笑顔で答えた。
やえは不思議そうに私の顔を見て言った。
「久しぶりに笑顔を見た」そう言って、嬉しそうに笑った。
「ヒロ君の事、大分いいの?」
「ヒロ…」私は、それが誰の事なのか理解するのに少し時間がかかった。
「あぁ、この間ブローチを直してくれた人?」
「え?何言ってるの?ヒロ君はもういないんだよ。何で出逢った日の事だけ覚えてるの?」
私は自分の頭の中が分からなくなった。
私の頭の中にはヒロは昨日出逢った青年で、私は彼女になった覚えも彼と過ごした日々さえ記憶の中にはなかった。
「ごめん。帰る」
そう言って私は店を飛び出して、マンションへ戻った。



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