「ええー!」
ノリコは嬉しそうな顔をした。
「静かに聞け。ユウダイ起きちゃうだろ。」
「そうね。」
アキラに落ち着かされたノリコは、
「まさかカズヒロに恋人だなんて…、それでいつも帰りが遅いのね。」
「うん…。ごめん父ちゃん母ちゃん。」
「ううん。謝らなくてもいいわよ。そういう時間も大切よ。」
カズヒロは、アキの耳が聞こえない事はまだ、両親には言わなかった。
「よし!その彼女、大切にするんだからね!」
ノリコはそう告げて、台所を掃除に行った。
「カズヒロ、お前なら彼女を幸せにできるぞ。」
「父ちゃん…。」
カズヒロは、いつも俺の事を1番に考えてくれる父を尊敬していた。
憧れている親にこんな嬉しい事を言われたカズヒロは、いつまでも笑顔が絶えなかった。
「あっ、今度連れてきて。母ちゃん、カズヒロの彼女が見たいな〜。」
「うん。だね。」
カズヒロは心の中で不安だった。
こんなことがバレたら、俺の母ちゃんはどんな風に思うだろう。
白愛高校。2年3組。
「…アキちゃんいないとつまらないなあ。」
ヒロが言葉を洩らした。
「ねぇ、1番つらいのは、カズヒロくんだよ。」
サユはカズヒロを心配した。
案の定、カズヒロはいつもより元気がなかった。
元気がないカズヒロを、サユは本当は見たくないんだけど。