手伝った方がいいよね。
「私手伝う───」
「光! 私も行く!」
リエちゃんは私の言葉を遮って、結城くんと一緒に部屋を出た。
私は深いため息をついた。
リエちゃんと結城って、どーいう関係なんだろ。
付き合ってるのかな。
リエちゃん可愛いし、結城くんと付き合っててもおかしくない。
もしそーだったらやだなあ。
「リクちゃん、何歌う?」
後部座席の男の子、シュンくんが選曲本を差し出す。
私はそれを受け取ってページをめくってみるけど、何を歌えばいいか分からない。
私は困惑した表情を浮かべた。
「ゆっくり選べばいいよ」
「う、うん。ありがと」
シュンくんはニコニコしながらこっちを見てる。
「シュンに気に入られた感じかなあ」
「そーなのか?」
「鈍いなあ、アキラは」
運転手の年上そうな男の人、アキラさんはタバコを吸いながら驚いたような顔をした。
「だってリクちゃん、可愛いじゃん」
「え、いやいや」
するとシュンくんは私の隣に座って、私の肩に腕をまわした。
私は少し横にずれて離れようとしたけど、また間を詰められる。
「彼氏いないんだっけ?」
「あ……う、うん」
「じゃあさ、俺と付き合おうよ」
シュンくんの声が耳元で聞こえた。
そして私の手を握る。
シュンくんはさらに詰め寄ってくる。
「ご、ごめん!」
私は鞄を持って部屋から飛び出した。
そして廊下を走って階段の所で止まる。
───『俺と付き合おうよ』
シュンくんの言葉が蘇ってきて、私は強く首を横に振った。
私は結城くんが好きなんだ。
シュンくんはいい人っぽいけど、どこか怖いところがある。
よく分からないけど。
あの部屋にいる皆そんな感じがする。
どうしよう。戻った方がいいかな。
帰ったら悪いよね。
「リエ、1人で持てる?」
「大丈夫大丈夫」
部屋に帰ろうと足を踏み出したとき、下から結城くんてリエちゃんの声が聞こえた。
2人が階段を上がってくる音が聞こえる。
私は反射的に近くにあったトイレに隠れた。