王様は、サラと出会ってから、ずっと心に留めていた母への思いを、今が伝えるチャンスだと悟りました。
「あなたが神なのでしたら、僕は、ひとつお尋ねしたい事があります。
僕を15歳になるまで育ててくれた、お付きの乳母のクルエラは……
どこかで無事に過ごしているのでしょうか。」
王様の問いかけに対し、神の言葉は、天空から静かにゆっくりと響き渡りました。
「さっき言ったはずだ。
お前のするべき事は、この国を守り、国の発展に努める事だとな。
お前を育てた乳母は、あくまでも乳母だ。
何をそんなにこだわる必要がある。
サラは、まだ使命を達成してはいない。
しばらくは下界に置いておく。」
神の言葉と共に、2つに割れた空は元に戻り、まるで、何事も無かったかの様に、再び王国に優しい時間が流れ始めました。
「僕の父は独裁者だった。
その父は神による制裁を受けた。
しかし、その神により、僕は生かされている。」
神の言葉は、決して王様の納得のいく答えではありませんでしたが、
初めて聞く神の声に、王様は、とても複雑な気持ちになったのでした。
ヒュー―バンババンッッ―ー‐
王様が再び、王国の人々と共に家畜の小屋を作る作業に当たり始めると、
背後から大きな花火が上がる音がしました。
突然の爆発音に、王様は驚き、辺りを見回すと、
何と目の前には、サラとタケルが立っているではありませんか。
いえ、サラとタケルだけではありません。
王様の知らない間に、王国の住人全てが、王様の周囲を取り囲んでいたのです。
「せ〜〜のっっ……
王様!!
お帰りなさい!!」
タケルの音頭で、王様を取り囲む、王国の住人全てが声を合わせ、
今、王様の無事の帰りを祝う声が、ひとつになりました。
「……な…みんな…
こんな所にいたの…?!」
王様の声が若干上擦っていた事に、サラもタケルも王国の皆誰もが気付いていました。