「あ〜っっ。王様が泣いてる!!」
「誰だ?!王様を泣かしたのは!!」
「さぞ辛い航海だったのじゃろ?!」
王国の住人は皆、王様の無事の帰国を喜び、
また、周囲を飛び交う喜びの言葉は、
王様にとって、
この1年間の航海の間に皆からの信頼を失わずにいた事を安心させ、
とても嬉しい1日の終わりを示す事となったのでした。
明くる日――
サラは、王様と共に、以前より豊さが増した緑の森に架けたハンモックの上に座り、
王様の航海の、厳しくも楽しいお話を聞いていました。
「私ね、自分の使命を達成する事は、一生出来なくてもいいかなって思う。」
「何それ?!じゃあ僕は、一生この王国の王様として、未熟者だって事?!」
「そうじゃなくて………。」
「サラは、タケルの事が好きなんだよね?!」
「好きよ。1人の人間として。
彼はとても立派な方です。」
リスにフクロウ、綺麗な小鳥達――
王様が連れて来た動物達が、2人の事を優しく見守るかの様に、じっと見つめています。
「ねぇ王様。
前に私が話したお話には続きがあるの。」
「へぇ。どんな?!」
「神は言いました。
王様が20歳になった時、
お付きの乳母が母親と名乗る事を許しましょうと――」
「じゃあ、僕の母さんは、今もどこかに元気でいるんだね!!」
「えぇそうよ。もしかしたら、すぐそばで王様の事、見守ってくれてるかもね。」
心地よい風が、優しくハンモックのブランコに降り注ぎます。
「ねぇサラ。」
「なぁに?!王様。」
――ボクハズットキミトイッショニイタイ――
素敵な王国を築く事が出来た王様は、これからもずっと、
王国の住人の皆に信頼され続ける事でしょう。
もしかしたら、
神様が2人の恋のキューピッド役になってくれたのかも知れませんね。
☆END☆