「俺達は、親のことを少しも考えずに、会っていたよ…。」
アキは反論した。
『カズヒロ!1番私の事を考えてくれるんでしょ?私、会いたいよ!』
カズヒロはゆっくり手話をはじめた。
「俺だって会いたいよ。できるなら毎日ずっと会いたいよ。でも、それはわがままな事だったんだ。アキも分かってほしい。」
『えっ…カズヒロ…。』
カズヒロは、ゆっくりと離れ始めた。
「アキは、お母さんの事、大切にしてあげて。」
『嫌よカズヒロ!』
走りだそうとしたアキを、母が止めた。
「カズヒロくんも覚悟を決めたの…。」
『嫌よ!私は会いたい!』手話が荒い…。カズヒロは感じ取った。
「俺はずっと…お前を愛してるし、また高校でも会えるし、ずっとアキが好きだ!」
…と伝えたカズヒロ。
抱きしめてやりたい。
でも無理だ…。
もう、距離は遠い。
カズヒロは前を向いて、病院を出ようとした。
そのとたんに、一気に緊張が解けたのか、涙があふれ出た。
自分の気持ちに素直でいちゃいけない…、と奮い立たせてきたカズヒロ。
切ない恋は、涙とともに崩れようとしているのだろうか。
俺とアキの恋は、これで終わりなのか…。