「とりあえず僕があいつの気を引くから君はその間に逃げて」
「しかし…あなたの能力を使えばディアーガと対等に戦えるはずです。その補助を私が…」
「ごめん…自分自身の能力がまだわからないんだ」
少女は、戸惑いの表情を見せる。
「なら、私が管理局に救援を呼びますから、しばらく耐えていてください!」
少女は、即座に灯りに照らされた街道の闇に消えて行った。
僕は、少女がいなくなるのを確認して胸を撫で下ろした。
(とりあえず、今は救援が来るまでディアーガの攻撃を避けるのよ)
アイリが僕の心に語りかける。
「わかった。極力頑張るよ」
ディアーガは、不気味なうめき声を上げ、一匹のままこちらに勢いよく突進してくる。
何とか直前で、器用に交わす。
(違うそれは幻よ!)
「しまった…」
首筋に鈍い痛みが走る。
背後から、実物のディアーガに首筋を噛まれてしまったのだ。僕の首からは、生温かい血が流れているのを感じる。同時に意識が薄れる。
(雄!しっかりして!)
「ごめん…どうやら駄目みたいだ…」
体の力が抜け、暗闇の世界が広がる。
「ここは…どこだ? 僕は死んだのか?」
辺りを見渡すと黒い景色しかない。
「君は、あの状況から助かりたい?」
途方に続く闇から、聞き覚えのない少女の声が聞こえる。
「誰? ここはどこ?」
僕は、咄嗟に暗闇に向かって叫ぶ。
「いいから、私の質問に答えて」
少女の声が強めに返ってくる。
(状況…おそらくディアーガのことだろうか)
「あのディアーガを何とかできるのなら」
「あなたの能力は、はっきり言って…一種の永遠に続く呪いと一緒よ…それでも、受け入れることができるの?」
「わからない…でも、あのディアーガを何とかできるのなら」
(まだ、ここで死ぬわけにはいかない。)
僕は迷わず即答する。
「そう…あなたは…いつか後悔することになるわ…ここで死んでおけばよかったと」
どこか冷徹で哀しい声が暗闇から響いてくる。
「絶対適応能力は…」
少女の声が途中で途絶えた。
ふと気がつくと、ディアーガに首筋を噛まれた状況に戻っていた。だが、一つ変わっていた状況があった。
地面に、夥しい血が広がっているが、僕の意識がはっきりしている。
「どうして…わかる…武器を召喚する方法が」