彩実はまだ銃口の冷えきらないトカレフを内ポケットにしまった。
「いきなり何すんですか!?」
龍一の額には、うっすら汗が浮かんでいた。
「あら、これで解ったでしょ?」
他人事のように、彩実はまた微笑みを見せる。
あまりの悪怯れのなさに、龍一は怒る気にもなれなかった。
(でも・・・確かに強くなってる、めちゃくちゃに。)
龍一は弾丸をはたいた手を見た。指の一部が少し黒ずんでいる。痛みはほとんど、ない。
(鉄砲の弾をまるでハエみたく・・・)
龍一は拳をギュッと握り締めた。
「この力があれば・・・!」
小さくつぶやいた、その瞬間だった。
ビーーーー!ビーーーー!《トキ、テイシヲカクニン!バスターハタダチニ『チョウヤクシツ』へ・・・》
耳をつんざく音とともに、機械的なアナウンスが流れた。
「あら、また『マウス』がでたのね。」
彩実は医務室の壁に内蔵されたスピーカーを見ながら言った。
「あ、龍一君。君はまだ行かなくても・・・」
龍一に向きなおした彩実は、その顔を見て思わず声を失った。
「・・・・・・!」
歯をギリギリと食い縛り、殺気だった目をした形相の龍一が、スピーカーを睨み付けている・・・。
「時が・・・止まったってことは・・・」
深く、ドスのきいた声だった。
「りゅ、龍一・・・君?」彩実は信じられなかった。(この子が・・・さっきまでドギマギしてた龍一君だってゆうの・・・!?)
「『マウス』は・・・」
彩実の呼び掛けにも、龍一は反応しなかった。
「アキラの・・!アキラの仇ぃ!!!」