(何を言っているの?)
僕は無言で右手に強い祈りを込める。すると、右手が光に包まれ何かが現れる。それは、黒い鉄製の剣のようであった。
(どういうこと?)
僕自身もどうして武器を召喚できるのかわからなかった。
右手に構えた鋭い剣を首筋に噛みつくディアーガの頭を狙い突き刺す。だが、黒い霧となりディアーガは消える。右手にも、刺した感触が伝わって来ない。
「これも偽物なのか?」
(雄!目の前に分散したディアーガが)
目の前には、4匹に分散したディアーガが待ち構えていた。
「この時を待っていた」
僕は、剣を軽く振るう。すると、剣先が縦にスライドし銃口が現れる。
右手に構えた剣を分散したディアーガに向け、意識を集中させ剣に力を込める。
次の瞬間、銃口から鋭い閃光が放たれる。右手に、軽い反動が伝わる。
閃光は、複数のディアーガの全身を容赦なく貫き、ディアーガは光の塵となり消える。
「終わった…」
全身の力が抜け、地面に仰向けに倒れこむ。
(どうして…あなたが…)
アイリは、驚きのあまり言葉を失っていた。
「僕にもわからない…」
それにしてもおかしい、致死量の血を流しているはずなのに全く意識がある。それに、パラレルの住人ではない僕が、どうして武器召喚ができるのか。
「少し疲れた…ちょっと寝るよ」
(ちょっと…そんな状態で…しかも、あんなに血を流して大丈夫なの?)
「…」
僕は、いつの間にか街道に眠ってしまっていた。
目が覚めると僕は自宅のベッドに寝ていた。首の傷は、不思議なことに無くなっていた。
(目が覚めた?)
アイリが心配そうに言った。
「うん…大丈夫」
(あの後、あなたは、管理局に運ばれたのよ。怪我は、昨日の眼鏡の少女が治癒魔法で徹夜で治してくれたわ)
「そうか…あの人か。お礼を言わなきゃ」
(それから、あなたの先ほどの戦闘のデータはヘレーナに伝えたわ。あなたの能力について何か分かるかもしれないわ。)
「何かわかるといいけどね〜」
部屋のカーテンを開けて窓の外を見ると、すでにもう朝を迎えていた。