07.部屋
私とアオトは並んで道を歩いている。
アオトが家まで送るって言ってくれた。
泣き止んだばかりの私は、鼻をすすりながらゆっくりとした足取りで歩く。
アオトは何も言わずに私のペースに合わせてくれている。
気持ちも少し落ち着いた。
多分、アオトが一緒にいてくれたからだと思う。
あのまま1人でいたら、ずっと泣きっぱなしだっただろーなあ。
思ってみれば、こうしてアオトといるのは久しぶりだ。
落ち着くなあ、やっぱり。
そーいえば、アオト何があったのかって聞いてこないけど、言った方がいいのかな。
「あ、私の家ここ」
「……もう平気?」
その言葉に、私は小さく頷いた。
するとアオトは、よかったって言って笑った。
久しぶりに見た。
こっちを温かくさせるような、アオトの笑顔。
「よ、よかったら寄ってく? 話したいことあるしさ」
「いいの?」
「うん」
やっぱりアオトには話しておかなきゃね。
聞いてこないだけで、絶対疑問に思ってるだろうし。
私たちはアパートの階段を上り始めた。
「アオト、私ね……失恋しちゃった」
部屋に入ってベッドに座ると、私は話し始めた。
アオトは私の隣に座って、黙って話しを聞いている。
「今日、その人に誘われたんだ。その人の友達も一緒だったんだけど」
「うん」
「それでね、その人に彼女がいるって知って……。その人と彼女が話してるの隠れて聞いちゃってね」
「うん」
「そこでその人、私のこと……付き合ったらめんどくさそうって。あんなやつ嫌だ、って」
結城くんの言葉が、結城くんの声が蘇って、また涙が溢れた。
私は途切れ途切れになりながらも話を続けた。
「私、が……今日誘われた、のは……友達に誰か紹介してって、言われたから、だって。だから、私───」
いきなりアオトが私を抱きしめた。
あの時とは違って、強引で強い。
「……アオト?」
「もういい」
「え?」
「そんな奴のことなんか、忘れなよ」
そう言うとアオトは、さらにきつく抱きしめる。
「アオト、苦しい……」
私が言うと、アオトは私の両肩に触れてゆっくり体を離した。