「精神的なものだと思われます。カズヒロくんに私の耳が聞こえないことで迷惑をかけたくない。あなたは心のどこかでそう思っていませんか?」
アキは、深く考えてみた。
…確かに、そうだった。
カズヒロに迷惑をかけたくない…。
その気持ちがいつも、心のどこかにあった。
『確かに、そう思ってました。』
「あまり、自分を責めないで生きてほしいと、私は思います。辛いときは、つらいって言って、助けを求めるんです」
『そうですよね…。』
アキは深々とお辞儀をして、診察室を後にした。
診察室を出たアキは、迷っていた。
『耳の手術はアメリカでできる。』
『費用がたくさんかかる。』
私の家じゃ無理か。海外で手術するのも怖いし。
アキは、気分転換のため、外に出て携帯を見た。
すると、やっぱりカズヒロからメールが来ていた。
『検査の結果、どうだった?』
アキは、どこからどこまで話せばいいのか迷った。
『私の耳の手術がアメリカで出来るらしい。でも、費用がたくさんかかるから、今ゆっくり考えてるとこ。あと、耳にきた激痛は、精神的な…』
…精神的な?
いや、この文字を入れたら、カズヒロが心配する。
アキは、『精神的な』を消して、
『一時的なものだって。』と打ち直した。