かなかな、嗚呼かなかな
日暮を告げる
高く美しき声
蜻蛉は稲を越え
山脈を越えて
やがて愛しい
不得手なピアノの
旋律の方へ…
黄昏草が咲き出した
つられて、かなかなも
鳴いている
そして淡青色は
茜に食われた…
私はゆっくりと
家路につこう
この感傷を
疾く文字に
残したいけれどもさ
しかし私はゆっくりと
家路につこう
もうそんなものは
どうでもいいのだから