「仕方ねえよ。初めてだし」
ダリルは目の部分に穴が空いたフードをかぶって、ザックの背中を叩いた。
ザックはそれに続いてフードをかぶる。
目の部分な十分な穴を開けておいたお陰で、前がよく見えた。
「前回のフードは上着に縫い付けないものだったから脱げてしまったけど、今回は母さんに頼んで縫い付けてもらったからね」
「サンキュー。これで脱げないか気にしなくて済むぜ」
ダリルはリリアに向かって親指を立てた。
「メディナさん、大丈夫かな…」
ザックは道を隔てた向こう側の草村を見つめた。
そこには囮役のメディナがフードをかぶって待ち構えていた。
「大丈夫だろ。あの人なら兵士三十人くらいでも軽く相手にできるぞ」
「そうなんだけどさ」
「逃げ道のルートも確保してあるし、大丈夫よ」
リリアは再びザックの肩を叩いて、励ました。
「おい…なんだあれは?」
ダリルは何かに気付いて、道の向こうを指差した。
そこには大きな鉄の盾を持った一人の男が佇立していた。
「兵士かしら…?」
「いや、盾にこの国の紋章が無い。兵士の可能性は低いな」
ダリルは小声で答えながら、首を横に振った。