「なぜ王女様が、どうして」
チェロはお許し下さい、と言い残すとタクトから離れていった。
タクトは不死鳥の欠片を全て民家の中にあった机の上に広げた。
「木彫りの不死鳥、揃いましたね」
傍らにはフラットが立っていた。
「ああ、あとは勇者の血」
「それについては全く情報がありませんよね」
「でも、なんとかなるさ、なんとかしてみせる」
その時扉が勢いよく開いた。
「おい!まずい!」
外に出ていたウェドだ。
動ける四人は急いで外へ出た。
家の前には五人のパラス兵がいた。
「もう諦めろ」
「あなた達はどうしてこんなことをするんですか」
タクトはウェドの制止を無視し兵士の前へ出ていった。
「俺達はこうするしかないんだ」
「だからどうして!」
「その体躯、屈強にして鋼に劣らず」
突然チェロが呪文のように唱え始めた。
「その精神、鋭意にして剣に劣らず」
チェロはそう唱えながら兵士の前へ出てきた。
「あなた達の今のそれは脆く、錆び付いているのですね」
「チェロ王女、王女にも殺害命令が出されております」
「でしょうね」
兵士がゆっくり自らの剣を引き抜いた。
「貴方が本物の兵士ならば、私を斬ることはできないはずです。私は、貴方を信じる」
チェロは両腕を上げた。
兵士は何かを振り払うように大声で叫びながら剣を振りかざした。
「申し訳ありません」
兵士は振りかざした剣により一層力を加えた。
それでもチェロは眉ひとつ動かさずに見つめている。
「・・・もうやめろ」
兵士に語りかけたのは別の兵士だった。
「お前もわかったろ。今の国王よりこのお方はずっと国王の器を持ってらっしゃる」
兵士は正気に戻ったように剣を手から放した。
「チェロ様、仲間の無礼をどうか」
説得した兵士がチェロに土下座をした。
「無礼?私には見え過ぎた結果でしたが」
チェロはにっこり微笑んだ。
「チェロ様、我々は先発部隊であってまだ仲間がやって来ます」
「そんな!まだ家の中に動けない仲間がいるのに!」
「なに、動けないだと」
「チェロ様、せめてもの罪滅ぼしにその仲間達の護衛をやらせて頂けないでしょうか」
チェロは悩むことなく五人の兵士に護衛を頼んだ。