宇宙戦隊・2

豆宮  2006-09-01投稿
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病院から帰宅した時には夜7時を過ぎていた。
コウの父と妹は10年前に事故で他界しており、コウは母との二人暮らしである。
母は仕事で深夜にならないと帰って来ない。仕事というのも水商売であるが…。
帰ってきた母に、自分はもうすぐ死にますと告げたらどんな顔をするだろう。…喜ぶかもしれない。自分が死ねば心置き無く新しい恋人と一緒になれるだろう。
それにしてもあの医師…こんな重要なこと話すなら「親御さんも同席をお願いします。」くらい言うべきじゃないのか。母がついてきてくれる保証も無いけど。

コウはテーブルの上に、母がコウの為に置いていったとみられるカップ麺があるのに気付いた。
食欲が無いのと、それが自分の嫌いなシーフード味だったことから、コウはカップ麺を棚に戻して自分の部屋へとなだれこんだ。

ベッドの上でゴロゴロしながらコウは医師が言った言葉を思い出していった。
「何かさ、そういう天使の羽みたいな腫瘍持ってるってうらやましいなぁ。僕、お尻にアザがあるんだけど、ママはカエルみたいな形ねって言うんだよぉ〜カッコ悪いよね。」

…いい年してマザコンってことの方がカッコ悪いだろう。

「なんか奇跡の人みたいでいいね。生まれ変わったら救世主とかになれるんじゃないの?僕、SFとかファンタジーとか好きなんだけど……」

医師の言葉を思い返しながらコウは窓の外を見た。
紙に弾かれた絵の具みたいに空に広がる星。一つだけにじんで、仲間外れにされて居心地の悪そうな月。
「あ……」
この時コウは初めて流れ星を見た。スポイトで吸い取られた水のようにあっという間に姿を消す光の線。
自分の命を連想した。
コウはなんとなく目を閉じた。目を閉じれば見えるのは瞼の裏の世界。光の点が現れて、それがだんだん増えていく。まるでさっきの星空のようだ。
光の点は徐々に列をなして蟻のように瞼の裏を横切っていく。列は増えて、気付けばテレビのノイズのような世界が広がっている。

「……あれ?」
コウは違和感をおぼえた。いつもはただ単調に広がる瞼の裏のノイズ。それがだんだんと歪んでいき、一つの映像を作り出していく…。
「夢の世界に入っただけかな…」
この時のコウはそう思った。そしてとりあえずその映像に見入ることにした…

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