「幸せになってね」
貴女は最後にそう言った
その時俺は
今、こんなに後悔するなんて
こんなに貴女が恋しくなるなんて
思うことないと、思ってた
高校に入学して、一か月。
ようやく友達や先生とも打ち解けて、始まったばかりの高校生活がそれなりに楽しくなってきた。
だけど今日、俺が何よりも一番楽しみだったのは部活だった。
中学から始めたバスケ。俺の中学は結構有名で、俺はそこの副キャプテンを務めていた。自分で言うのもなんだが、実力はある方だと思う。
入ってから昨日まで、ランニングや筋トレばっかりでキツいだけだった。
だけど今日からはボールを触らせてもらえる。
それを聞いてから、放課後が楽しみで楽しみでたまらなかった。
放課後。
体育館に一番のりだった俺は、いつものように着替え、モップを出したり、ゴールを出したりしていた。
「け〜んたッ!!」
「うわっ!!びびった〜!!」
こいつは中学から仲がいい麻美。同じバスケ部だ。
明るくて誰とでも気軽に話す。
俺にとってはただの友達だが、入学してからモテてるらしい。
「ゴメンゴメン☆男子、今日からボール触らせてもらえるんだって??」
「うん。女子はいいよなぁ〜入学してすぐ触れるから」
からかうように俺は言った。
「人数少なくて悪かったねッ!!」
笑いながら麻美は言った。
女子はいわゆる弱小チームで、人数も少ない。麻美たちを含めて10人程度だ。
「冗談だって。そんな怒んなよ」
「別に怒ってナイしッ☆まぁとにかく頑張りなよ、健太♪」
「あぁ、麻美もな」
そういって手を振って去って行く麻美をなんとなく目で追った。
女子はすでに集まっているらしい。
(まじめだなぁ〜………ん??)
俺は一人の子に目を止めた。決して可愛いわけじゃない。外見も男っぽい。
なのに…
(笑顔がすっげぇいいな)
それが彼女、中島 梨帆の第一印象だった。