ルイは明るくて優しくていつも笑顔。
みんなから愛されるようにと作られたキャラ。
「ルイといると楽しいね。」
ルイにだまされるお客さんをエリカはいつも心の奥で笑っていた。
おもしろいほどにだまされる男たち。バカみたい。
どんなにかっこよくても、どんなに優しくても情がわくことなんてなかった。
昼のエリカと夜のルイ。エリカはすっかりルイを演じることにはまってしまった。
たくさんお金をもらって、おしゃれして、おいしいもの食べて、ヒトを見下して、毎日ホント楽しくて、ずっとこんな日が続けばいいと思っていた。
思っていたはずだったのに…
気持ち悪い。触らないで。ウザい。
もうルイでいることに飽きた。
毎日同じような客ばかり相手してルイの生活もワンパターンになってしまった。
もうダルいし、やめよっかな。
エリカは最近そう思うようになっていた。
今日はヒト全然入んないなぁ。エリカはやくあがりたいなぁ。
「ルイちゃんラスト1時間ね。」
「えーまじでー。
早く帰りたいしー。」「そう言わないで、あと1時間頑張ってよ。」
店長とだらだらとおしゃべりして、このまま誰も入らないで閉店しちゃえばいいのにと思っていたときだった。
カランカラン…
店の扉が開いた。
「いらっしゃいませ〜。」
エリカはダルい体を無理矢理起こし入り口に向かった。
「まだやってる?」
入り口には2人の男性。「やってますよ。
2名様でよろしいです かぁ。奥のほうどうぞ 〜。」
あと1時間、長いなぁ。エリカはアクビをかみ殺して、ルイを演じはじめた。