「そして私達は宝探しをするけど見付からない。
当然よね。
貴方が持っているんですから。
貴方はその間に私達を観察して、その中の適当な人物に、それを売り付けるのよ。
十億や二十億位要求しても、きっと相手は応じるでしょうね。
誰が適任かな?
明彦兄さんか深雪姉さんというところかしら?
もっとも、こんなことを私が改めて言うこともないでしょ。
貴方は全て承知のはずだから…」
「なるほど、それはうまい手だ。
ちっとも気がつきませんでしたよ。
もし私でしたら、きっと明彦様を選ぶでしょうね。
私は女性と商談をするのは苦手ですから」
「でも雅則兄さんの考え出したこの宝探しは、貴方の予想を上回るものだった。
貴方は権利書の発見に失敗したのよ。
そして貴方は次善策を取らざるをえなくなった。
だから、貴方は今ここにいるのよ。
ゲームが終わり、全員が退場したあとで、一人だけここに戻り、この屋敷をバラバラに解体してでも、権利書を見付けるつもりだったんでしょ。
あなたはタカをくくっていたのよ。
自分が散々探し回っても見付けられなかった物が、たったの一週間で見付けられるわけはないと、そう決め込んでいたのよ。
でも私の兄弟達は、貴方の予想以上に頑張ったわ。
貴方は何度もハラハラしたはずよ。
だって、もし権利書が発見されてしまったら、貴方の計画は何もかもダメになってしまうんですものね。
だから明彦兄さんが庭の木の下を掘った時も、深雪姉さんが鎧を分解した時も、そして喜久雄兄さんが屋根に登った時も、貴方はいつも、そのそばにいたのね。
心配で、部屋にじっとしてはいられなかったのよ」
鹿島は孝子の持っている封筒をチラリと見た。
どれもまだ、封を切った形跡はない。
鹿島は唇の端を曲げるようにして笑った。
「話としては面白いですよ。
とってもね。
ですが肝心なところが間違っていますよ。
孝子様は何か勘違いをしていらっしゃるようですね。
孝子様の持っている封筒の中身は、もう何の価値もない物なのですよ。
ただの紙切れ同然です。
有効期限は過ぎたのですからね。
そんな物を探すために、なぜ私が屋敷の解体などをするのですか?さぁ、それをこちらに渡しなさい」
鹿島がまた一歩孝子に近付く。
「そうだといいけど…」
そう言って、孝子が一歩下がる。