「なら、あの人は一体…?」
「しっ!来たぞ!」
ダリルは人差し指を口元に置いて、注意した。
ザックは口を慌てて押さえながら、盾を持った男がいる場所と反対方向に目をやった。
そこには坂道を登ってくる兵士たちの姿があった。
「いいか、メディナさんが先頭を引きつけたら襲いかかって混乱させるんだぞ」
「わかってる」
「了解よ」
ダリルの呼びかけに、ザックとリリアは力強く頷いた。
その頃、メディナは草村に身を潜めて坂道を登ってくる兵士たちの動きを注視していた。
―だいたい二十名くらいかしら。
おおよその人数を把握すると、彼女は剣の柄に手を掛けた。
―それにしても。
目を盾を持った男に向ける。
―あれは何なのかしら?その動向によってはこちらの作戦に支障が出るのだけれど…。
彼女もその男の存在に戸惑いを覚えていた。
すると突然、男が大きな叫び声を上げると、盾を目の前に突き出しながら兵士たちに向かって走り出した。
―え!?
メディナは男の突然の行動に息を呑んだ。
「は?え?」
ダリル、ザック、リリアの三人は男が兵士に向かって走り出すのを見て、口をあんぐりと開けた。