「ドーランド…って…」
アルファは携帯を畳み、私に渡しながら言った。
「やっぱり知ってたか。でもまさか、俺がスパイだなんて、思わないよな?」
私は頷いた。
けれど、信じられない。
ドーランド長官の悪い噂は、色々と聞いている。
金を積まれて、事件をもみ消したとも…
アルファが、その息子なの…?
しかも、リーナと兄妹だったって…
「…ああ、今のうちに言っておくけど、養子なんだ、俺」
「養子?」
「男が生まれなかったかららしい。親父は、俺の生い立ちを知らなくて、『得体が知れない、未知数』だから、『アルファ』と名付けられた」
「あなたは、覚えてるの?」
また、黙り込むかな、と思った。
一言、こう言った。
「…思い出したくもない」
「…やはりな」
掲示板を確認し、そう言ってほくそ笑むドーランドを見て、人は決まって思うだろう。
狂ってる。
さっさと捕まえた方が、精神的にも彼等の為だ。
今回、そう思った若い部下は、彼等が犯人でないという事も、また、アルファとドーランドの関係も知っていた。
いくら養子とは言え、酷すぎる。
(…きっと、何かあるな)
だが、その予想は大きく外れるのだが。
-The Last Escape 第四章『凶暴性』に続く-