「実は…雇用拡大も消費税引き上げも経費削減も皆ができると言ってるので必ずできると思うのです」
「…それは、全て同じ方から聞いた話ですか?」
鳩さんは後ろに引いて姿勢を正すと、とても真剣に言いました。
「いいえ、皆違う小動物からききました。そして皆の話を総合的に検討した末にできるような気がしてきたのです」
「つまり…それぞれの項目をそれぞれの小動物がそれぞれの方法で可能だと鳩さんにお話ししたのですか?」
「はい、そうです。流石は先生。ご明察です」
「いえ、そのようなことは…。」
野ねずみ父さんは謙遜しつつ気まずそうに細長くしなやかなひげを撫でました。鳩さんはさらに言います。
「なのに先生、せっかく前回のCEOに就任して箔を付けたっていうのに、誰も僕の話を聴いてくれないんです…、よよよよよ…」
鳩さんはそう言って自分の手羽先で涙を拭います。
「…そうですね、CEOはとても重要な決定責任者ですからね。
そんなにお嘆きになるほど皆さん素っ気ないのですか?」
「いいえ、そこは皆社会人ですから…」
鳩さんは下から上がるまぶたをパチクリして首を捻りました。
「…そうですね、全く話をきいてもらえていない訳ではないような気がしてきました。もしかしたら私の努力が足りないのかもしれません
僕にできることは何かあるでしょうか、先生。」
「それは私から申し上げるようなことではありませんよ、鳩さん」
「それはそうですが、何から考えたら良いのか漠然としてて分からないんです。是非先生にご意見をいただきたい。せめてヒントなりとも何かお願いできないでしょうか」
鳩さんがあまりに必死に尋ねるので、野ねずみ父さんは遠慮がちにこう言いました。
「では鳩さん、まずはご自分でお考えになってみるのはいかがでしょうか」
「なるほど!それは素晴らしい。さっそく実践してみます。
ありがとうございました、先生。先生のおっしゃったとおり、話してみたらなんだか心がスッキリしたように思います。」
鳩さんは丁寧に頭を下げると退室していきました。
そして野ねずみ父さんは冷や汗を早く乾かそうと椅子の上でジタバタとしきりに大急ぎで毛づくろいを始めたのでした。