中でも君が笑った顔が一番大好きです
顔の輪郭が少し変わった
肩がまた少し小さくなった
不意に着く溜め息
何となく哀しそうな瞳
目の前の僕ではなくその先の遠くを見つめる様な視線
何度も唇を噛み締める仕草
そして少しずつ消えて行く笑顔
『もう遠くへ逃げたいな。誰もいない静かな処へ。そうだな、海が見える処。そこで朝貝殻を拾ったりして。昔は良く桜貝を探してたな。綺麗な桜貝を見付けたら貴方に送るよ。』
静かに笑いながら
静かに溜め息を着きながら
君は少しだけ涙を溜めて言った
僕はその姿と言葉に泣いた
『何で泣くの?』と呆れ顔で言う君がまた寂しそうで泣いた
君の苦しみを軽くしてあげる術を知らない
会える時間は君を楽にさせてあげたいのに
悩みも愚痴も耳にタコが出来るくらい聞いてあげたい
それくらいしか僕には出来ないから
それくらいしか僕には出来ないのか
情けない
信じていた
君の苦しみの先にはきっと笑顔があるのだと
一緒に見付けてあげるのだと
また大好きな君の笑顔が見れるなら
『ありがとう。私の為に泣いてくれて。』
前より細くなった腕を伸ばして僕の肩を撫でた
思った以上に暖かい君の掌に君の命を感じた
消えないで
此処にいて
君を守り続ける事は出来ないかもしれないけれど
君を見守り続ける事は出来るから
君の小さな背中を見送りながら不安は爆発する
今にも消えそうで
あの小さな背中にどれだけの大きなモノを背負っているのだろう
そんな風に思うと僕の心臓が張り裂けてしまいそうで
君の名前を叫んだ
もう泣いたら駄目だと堪えていた涙が溢れ出した
君を失いたくはなかったから
ゆっくりと君は振り返り『またね』と笑った
力無い笑顔でも良かった
暗い夜に君の白い肌が浮かぶ
綺麗だった
君の背中が見えなくなるまで
君の足音が聞こえなくなるまで
僕は立ち尽くしまた君を想った
『またね』
君が残したその言葉を信じてまた明日を生きよう