寝ようとしていた哲彦の携帯が鳴った。
麻由からである。
「ごめん、こんな時間に。寝ようとしてたかな?」
「うん…でも気づいて良かったよ。どうしたの?」
「あのね…3月にくるでしょ?私、正式にお店辞めるの…。報告なんだけどね」
「そっか…よく決断したね。じゃあ、本格的に、福祉の道に進むんだ」
「うん…だから、今度来る時が、私にとって最後の出勤になるかなって。最後のお客様は、やっぱり哲さんだなって…」
「そうか…そう思うなら、最後を飾るゲストとして、おじゃまするよ」
「ごめんね。それでね…お願いがあるんだ。」
「何?」
「私も定期的に、関東に遊びに行くから、これからも会ってくれるよね?」
「もちろん!この何ヶ月も、その都度誓い合ったじゃん。やっと…やっと、お互いに違う立場で話していくことが出来るね?」
「うん…。哲さん、はじめて会った時から、だいぶ経ったけど、こうやって、やりとり出来てるのは、不思議だね?哲さんには、お金使わせちゃったけど…」
「そりゃ、俺が好きで、こうやって旅行して、君と出会えて、君に会いたくてきてるんだ。…俺的には感謝してるし、全然苦にならないよ」
「ほんとに?」
「ああ…。それまでの俺は、遠出なんかしたことないし。ふとしたきっかけでね…俺の友人がね…そっちに旅行したことがきっかけでね。
俺も、きっと運命に導かれるように、そっちに行って…だから、あいつには感謝してんだ。君と出会わせてくれたから」
「義人さんだったよね?りおさんの、お客さんの?」
「ああ…」
「私も感謝しなきゃね。哲さんと出会わせてくれたから…」
「ありがと」
「義人さんは、優しい人なんだね。りおさんが、いつも気づかってくれるメールをくれるって…きっと、誰にでもそうなんだね。…だから、恋愛で損してる…」
「そうなんだ。だから、俺は決めてるんだ。自分の幸せは、あいつの幸せを見届けてからだってね…ごめんな。気持ち悪いこと言って」
「ううん…やっぱり哲さんを、好きになって良かったよ。私も応援するよ」
「ありがとな」
2人は、新たな約束をして電話を切った。
…だが義人に、りおから、あまり良くないメールが入った。