街の北側へリシュアは走った。昨夜魔竜を見失った街の北の森…魔竜ザイラスはまだ森に潜んでいたのだった。
(もっとよく探すんだった!)
苦虫を噛みしめるかのように顔には後悔が表れ、剣を握る手には一層力が入る。
街の北側の門はその姿を失っていた。
門の周りには街を囲む高い石垣があったが、それも門を中心に瓦礫の山になっていた。
先程の轟音に混じり聞こえた悲鳴の一部はどうやらこの門の破壊によるものらしく、門の瓦礫に下敷きになった者、それを救いだそうと焦る者が見えた。
リシュアはそのものたちに駆け寄ると瓦礫をどけながら、周りの人々に問いかけた。
「何があったんです!?ザイラスは?誰か魔竜を見ませんでしたか?」
近くにいた流れ者の戦士であろうか、無精ひげを生やし大柄な鎧をつけた男が瓦礫を堀る手を止めリシュアを振り返った。