アオトは私の目をじっと見つめている。そして
「リク、俺じゃダメかな?」
突然の告白に、私は驚くばかりで言葉が出なかった。
アオトは視線をそらさずに私の返事をじっとまっている。
何か言わなきゃと思ったけど、なんて言ったらいいかが浮かばない。
私は少し困ったような顔をして下を向いた。
「ア、アオト……私───」
「ごめん、やっぱり忘れて」
「え?」
アオトの言葉に、私は顔をあげる。
アオトは悲しげな顔をして薄く笑っていた。
「困らせるようなこと言ってごめん」
そう言うと、ベッドから立ち上がって玄関の方へ歩いていく。
するとその時、窓に大粒の雨が当たり始めた。
私は一瞬だけ窓の方をみて、すぐに玄関の方へと目を移す。
でもそこにはアオトの姿はなかった。
───『いやだよ、あんな奴』
───『リク、俺じゃダメかな』
頭の中はグチャグチャだった。
結城くんとエリちゃんの関係、結城くんの言葉、アオトの告白。
もうどうすればいいか分からない。
私はそのままベッドに倒れて、片腕で両目を覆った。
窓に打ちつける雨は、さらに激しさを増していった。
*
携帯の着信音が部屋に響き渡る。
私はベッドから起き上がって鞄の中から携帯を取り出した。
着信相手はユウカ。
通話ボタンを押して耳にあてる。
「リクー、今日どーだった? まさかまさかの展開になっちゃった感じ?」
「……」
「……何かあった?」
黙り続ける私に、ユウカは静かに問う。
私はあったことを全て話した。
ユウカがアオトの事好きだって知ってたけど、アオトとのことまで話した。
でもユウカは黙って聞いてくれていた。
「ごめんね。応援してくれてたのに。ユウカ、アオトのこと好きなのに……」
「何で謝ってんの? 私最初から分かってたんだからね?」
「え?」
「アオトくんがリクのこと好きって。でも私挽回を信じてたけど、今の話聞いて諦めついたよ」
「ユウカ……」
「ちゃんと返事してあげなよ?」
「うん、ありがと」
電話を切って、またベッドに倒れ込む。
返事、ちゃんとしよう。忘れてッていわれたけど。