続いての相談者は秋刀魚さんです。金魚鉢に入ってご入室です。秋刀魚さんは魚なので元々魚眼のため今更凸レンズ状のガラス越しに野ねずみ父さんを見ても特に怖がる様子はありません。
「先生、今日は先生に聞いていただきたいことがあって来ました。」
店頭では見られないほど、どんよりした面持ちで切り出した秋刀魚さんに野ねずみ父さんは応えます。
「はい、そのために私はこちらに勤めさせていただいているのですから、遠慮なさらずに思いのたけをお話し下さい」
野ねずみ父さんが机の上の金魚鉢の中の秋刀魚さんに言いますと、秋刀魚さんは水の中でポロポロと涙を流し流し言うのでした。
「皆さん最近酷いんです。海水温が下がらないのは僕のせいじゃないのに、高い高いって僕に向かって言うんです。」
「確かに秋刀魚さんにしてみたら酷い言われようだと思われるでしょうが、その高いというのはおそらく海水温のことではないのではないかと思いますよ。」
「そのくらいは分かっています。けどホントに酷いんです。海水温の1℃や2℃くらい我慢しろなんて言う人までいるんですよ。
僕たちはあなた方恒温動物と違って外気温のわずかな変化でも命とりになるっていうのに…!
熱帯魚を飼ったことがないんでしょうか!?」
「秋刀魚さんはあるのですか?」
「いいえ、ありません。魚が魚を飼ってたらおかしいじゃありませんか。」
大まじめな秋刀魚さんはさらに声を高めて言い募ります。
「人間が素手で触れたら火傷だってする場合もあるのに、そんな魚にあんなこと言うなんて、冗談にしたって酷すぎます!だいだいいつまで居座りつづけるつもりなんだ太平洋高気圧!!」
と、金魚鉢の内側の壁を力任せに殴り付けると秋刀魚さんはむなびれで顔を覆っておいおいと嘆くのでした。