「でも、そんなアキにも、小学5年になってやっと分かってくれる彼が出来た。」
…黒板に、アキへの酷い悪口が書かれている時、アキが泣きながら消していると、一緒になって消してくれる男の子がいた。
「…俺はコウタ。よろしく。」
『…ありがとう。』
コウタくんは、手話は分からなかったけど、ゆっくり唇を動かしてくれたから、アキも喋っていることが分かった。
「いつから、耳が聞こえなくなったの?」
コウタくんと話すときは、いつもアキは可愛いノートを持っていた。
それくらい恋してたんだろう。
アキは笑顔が増えて、幸せそうだった…。
『生まれてからずっと。』「ずっと?」
コウタは一瞬表情を曇らせたが、すぐ笑ってみせた。『どうして、私を助けてくれたの?』
「それは…。」
『それは?』
「秘密!俺が死んだら教えてやる!」
『じゃあ、かなり先じゃん。』
しかし、その秘密が明らかになる日は、すぐ来てしまった。
1ヵ月後、コウタが小児ガンに冒され、どんどん悪化していった。
それから、コウタは喋るのも弱々しくなり、いつ死んでしまってもおかしくない時期になった。
アキは、ずっとコウタの手を握っていた。