目を開けると一面真っ白な天井と眩しい光が見えた
どうやらここは病室らしい。点滴がひとつぶら下がっている
部屋には俺一人しかいない
頭痛が酷く起きるのも辛い。
「おはよう隼人くん。今日もいい天気よお」
看護士が笑顔で病室に入ってきた
「ここは…―」
取り敢えず重い体を起こし、外を見た。
周りは山に囲まれて都会育ちの隼人にとっては見慣れない景色だった
ふと下を覗くと、たくさんのパトカーが止まっていた
それをみた瞬間あの日のことを思い出した。血で赤く染まった自分やあの彼女のことも…
隼人は恐怖で震え上がった。
「リリィ!!リリィは!?俺はリリィに殺される、助けてくれ!!」
隼人の必死の叫びも看護士は尚も笑顔でなだめはじめる。
「隼人くーん、しっかりしてリリィなんてどこにも居ないわよ。また寝ぼけた事言っちゃってー」
「寝ぼけ…夢……?」
看護士はクスクスと笑いながら隼人の頭を撫でる
「嘘だ、あれは夢なんかじゃない……」
真っ青の顔をしながら思わず看護士にすがりつくように抱きしめた隼人
「取り敢えずベットに寝てちょうだいね、あとで先生が診察に来てくれるから大人しくしててね」
看護士はそのまま病室を出て行った
―なんだ…何かが変だ。俺は本当に夢を見ていたのか?だったら何で入院なんかしてるんだ?…駄目だ…何も思い出せない
そのときわずかに空いた窓の隙間から風が入ってきて隼人の鼻をくすぐらせる
とても甘く溶けてしまいそうな蜜のような匂い
恐怖で真っ青だった隼人の顔は次第に色づき始め、赤く染まっていく。
口元も緩んでいき笑いが止まらなくなった
―リリィ…近くにいるんだね……―\r
やはり俺は彼女無しでは生きていけないらしい
その日すぐに俺は病室を抜け出した
彼女の元へ……
しかしその日以来彼女に逢うこと、そしてあの香りを感じることはなかった
―続く―